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2016年4月

2016年4月23日 (土)

【伝わる朗読とは】20:音で演出する

前回は、読んで五感に訴える力の大きい作品は、朗読に向いていると書きました。
このような作品を朗読するときは、叙事をめざすのではないかと思います。語り手が感じたように読むのではなく、聞き手が情景をイメージできるように読むという感じでしょう。例えば、情熱的な文章と感じたら、文章も熱っぽく読むというのは違うのではないかと思うのです。かといって、淡々に読むのではないけれど、あくまで第三者的な視点も持って読むという感じでしょうか。

朗読会では、よく生で音楽を入れて演出をすることがあります。
BGMとして、音楽を入れる。話に合わせて即興的に音楽を入れてもらう。などなど。
それはそれで、聞き手への伝わり方に良い効果を生み出すものだと思います。

しかし、私は、音楽と一緒に朗読するのは違う気がしています。正しく言うと、音楽と一緒に朗読することと音楽なしで朗読することは、違うパフォーマンスだと思うのです。
物語の内容やシーンから、明るい話や暗い話と判断して、演奏家の人が作品の雰囲気に合わせた音楽を流すのは、まさにその雰囲気という叙情を音楽で伝えることとなり、聞き手側に演者の思いを押しつけることになるような気がするのです。

そして、音楽で朗読の言葉が負けてしまうこともあるでしょう。これは、音量の違いというのでなく、音楽を聞くと、その音楽を感じてしまい、朗読された言葉を聞くということがおろそかになってしまうのではないかと思うのです。
聞き手にとっては、今、聞いているこの話は、今、聞いている音楽のように明るい感じなんだなという感覚だけで満足してしまい、朗読している言葉は聞いてもらえない状態になるという気がしています。演奏家が音楽をつけてくれる朗読会は、実は、演奏会になってしまっていないかと思うのです。

場面展開の時や効果音的に、要所要所で音を出すという程度なら、聞き手の意識の転換を促す点で、より朗読を聞いてもらえる効果が出るのではないかと思います。
前回の「羊と鋼の森」で言えば、調律師が調律しているシーンを朗読で聞いているときに、実際のピアノの音が聞こえてきたら、もしかしたら、これは、いい効果があるような気がします。
前のブログでは、物語を目で読んでいる時にピアノの音が聞こえると良くないと書きました。今回は、朗読で物語を聞いている時のピアノの音は良いというのは、ちょっと話が違いますね。
これは、目で読むという行為には、音を聞く行為が邪魔と感じてしまうのかもしれません。耳で物語を聞いているときは、音を聞くことには障害はないが、その音も、事象を示しているのならいいけれど、情景を示すような音(音楽)は、聞き手がイメージするときに障害がでてくるのではないかと思います。でも、これも、私の感じることですから、他の方には違った感覚になるのかもしれません。

もちろん、音楽と朗読をコラボした朗読会はあってもよいと思います。たぶん、聞き手には伝わりやすいものになるでしょう。ただ、本当の意味での朗読が伝わっているかといえば、音楽の力に頼っているのだということを意識している必要があると思っています。

自分も言葉だけでちゃんと伝えられるようにしたいと思っています。

2016年4月16日 (土)

【伝わる朗読とは】19:五感に語りかける作品

4月は変化の時期。私も仕事のペースが変わってしまい、少々お疲れ気味。
そのため、木曜日の更新はできませんでした。
すみません。うまく伝わるように書くというのも大変なことなんですよねー。

=====

先日、本屋大賞というのがニュースでやっていました。1位になった作品「羊と鋼の森」について、テレビなどでいろいろとコメントが出ています。
ピアノの調律師の話ということなので、
「ピアノの音が聞こえてくるような文章・・」
「ピアノの演奏家ではなく、裏方である調律師にスポットを当てた・・」
とか・・
私は、この物語を読んでいないので、感想を述べる立場じゃないですが、一般的に読者にとって良い作品は、読むと、
・映像が目に浮かぶ。
・音楽が聞こえてくる。
・匂いがする。
・何かを感じる。
といった感じで、何か五感に語りかけるものなのではないかと思います。

ピアノの音は、物語を読んでも聞こえては来ません。
でも、この作品は、読むと音が聞こえてくるような文章になっているのでしょう。

もし、このお話を読んでいて、調律師が調律している場面に差し掛かったら、実際のピアノの音が聞こえてきたらどう感じるだろうかと思いました。
そうすることで、より物語に入り込めるか、リアルに感じるかというと、それは、ちょっと違うと感じてしまう自分がいます。
物語の中の言葉から、心の中で響く音があるので、その状態で、実際のピアノの音も聞こえてしまうと、それが心の中の音を邪魔してしまうような気がしています。
ドの音だと感じていたら、聞こえてきたのは、ラの音だったという感じです。
実際の音の方が、言葉から想起される音より直接的に伝わってくるからでしょうか・・

本を読むということは、聞こえていない音を自分の思い通りに感じる面白さがあるからこそ楽しいのであって、本当に聞こえてしまったら、興ざめすることになるのかもしれません。
でも、そういう音が聞こえる方がよいと感じる人もいるかもしれません。本を読むと、その場面に合わせた音が出る電子ブックみたいなのは、すでにでているのかもしれないですね。

そして、朗読について考えれば、目で読んで五感に訴える力の大きい作品の方が、朗読でも伝わりやすいものだと言えると思います。
声の響きで、五感で感じとる感覚をさらに助けるという感じでしょうか。ピアノの音を感じてもらうために、物語の中の言葉を声に出して、その声の出すリズムや間の取り方で、その音を聞き手の頭の中に感じてもらうことになるのではないかと思います。

・・・つづく。

2016年4月 7日 (木)

【伝わる朗読とは】18:写真に詩をつける

桜が満開。おそらく、今日くらいで、今年は見納め。写真をUPしても良いかもしれないけど、今日のお話のテーマから、写真は載せないのでした。

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前回と同じく、吉野弘さんの詩集のあとがきから気付くことです。

 写真に詩をつける上で一番苦労したのは、こちらの関心事とは無縁な光景が私の目の前に現れても、それに関心を寄せること、そこから、一種の”ほめうた”を生み出してゆくことであった。拒絶や無視からは、私の場合、詩が生まれないからである。
 写真に詩をつける上で、もう一つ苦労した点は、写真に写っていることを言葉に代えるだけでは詩にならず、写真に写っていないことを、写真の中から読みとって、詩にすることであった。詩が写真の中に埋没せず自立するためには、そういう作業が必要だったのだ。
「吉野弘 全詩集」収録詩集覚えがき

吉野さんが、ある会社の社内誌の企画で、社員の投稿した写真に詩をそえるという仕事を毎月していたそうです。その「写真に詩をつける」ことの難しさを語ったものです。

投稿の写真ですから、詩にしたいと思う題材ではありません。
当初、写真からは何も感じなかった状態から、しばらくすると言葉がやってくる。
題材となる写真をイメージとして刷りこんでいくと、言葉が表出してくるという感じなのでしょうか。

そして、2つ目の難しい点として挙げている「写真に写っていないことを詩にする」という話には、ハッとさせられます。
写真という映像情報は言葉より多くのことを語ります。百聞は一見に如かず。
写真にさらに言葉で情報を加えようとしたら、言葉の方が呑まれてしまうという感覚。わかるような気がします。
写真自体には、それだけで十分伝えることがある。それに言葉を加えるのは無意味。
「写真で伝えていないところを伝える」
その言葉はとても質の高いものなのではないかと思います。

朗読でも同じようなことが言えるのかもしれません。物語や詩には、それを目で読むだけで、伝えることができる。朗読は、物語の言葉の中に書かれていないことを伝えることなのかもしれません。

これまでのブログでは、詩作と朗読を無理に結び付けて書いているようなところがありますが、どうも関係性があるような感じを持つのです。

質の高い文章というのは、字数の少ないにもかかわらず、情報量が多いものなのだと思います。言葉の選び方、順序、作品全体の文章の構成などなど。作品の中の言葉以外の情報が導出しやすく、様々なイメージが出やすい文章。だからこそ、多くの方に読まれるものとして、つまりは、伝わるものとして世に出ている。だからこそ、文章を書く作家というものがあるのですから。
そういう優れた文章の中に、言葉としては書かれていないことを、「朗読」というものが、伝えやすくする手助けをしているのかもしれないです。
イメージ化をしやすくする。そのための語り方。朗読の仕方。響き、抑揚、間の取り方。そんな役割が朗読にあるのかもしれません。

これまで、吉野弘さんの書かれたものから起因して、詩作と朗読について、書き綴ってきました。ただ、「朗読」に求められていると思われることを書いてきているだけで、では、どうしたらよいのかまでは書けていません。明確な答えを提示できず、絵に描いた餅を見せているだけかもしれません。でも、漠然と言葉を読むのではなく、その目的や意図を意識して、方向性を定めることは大切なのだと思います。なによりも、朗読が好きだから、何かの方向性を求めて、いろいろと思いを巡らせることで、答えはいつか自然と降ってくるのだと思うのです。

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